はじめに
Railsには標準でRakeというGemが同梱されています。RakeはRubyで実装されたMake(UNIX系のOSで使用できるコマンド)のようなビルド作業を自動化するツールです。Ruby Make、略してRakeというわけですね。
RailsアプリにおけるRakeタスクの使い方としては、リリース後にスポットでデータを投入したり、wheneverというGemと組み合わせて定期実行したい処理を定義したりといったことができます。
本記事では、Rakeタスクの作成方法や実行方法について説明します。
Rakeタスクの基本情報
Rakeのインストール
RakeはRailsに標準で同梱されていますが、何らかの理由でインストールされていない場合、Gemfile
に以下を追記してbundle install
を行います。
Gemfile
# 以下を追記
gem 'rake'
Rakeをインストールすると、プロジェクト直下にRakefile
という設定ファイルが作成されます。Rakeの設定を変更したいときはこのファイルを修正します。
Rakefile
# Add your own tasks in files placed in lib/tasks ending in .rake,
# for example lib/tasks/capistrano.rake, and they will automatically be available to Rake.
require_relative 'config/application'
Rails.application.load_tasks
Rakeタスクの確認
実行可能なRakeタスクの一覧を確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ rails -T
上記のコマンドを実行すると、自分で作成したRakeタスクを含むRakeタスクの一覧が表示されます。一覧の中には、Railsに組み込まれているRakeタスクも含まれています。rails db:migrate
などいつも使用しているコマンドの実態は、Railsに組み込まれているRakeタスクだということがわかります。
なお、上記のコマンドはタスクの説明(description
)が存在するRakeタスクのみを表示します。Railsに組み込まれているRakeタスクのうち、バージョンアップにより使用が非推奨となったRakeタスクについては説明が削除されており、上記のコマンドでは表示されません。説明のないRakeタスクも含めて一覧を確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ rails -AT
指定可能なすべてのオプションを確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ rake -H
Rakeタスクのヘルプのため、rails
コマンドではなくrake
コマンドを使用していることにご注意ください。rails
コマンドとrake
コマンドの違いについては、下記の「rails vs rake」セクションを参照してください。
rails vs rake
Railsにはrails
とrake
という2つのコマンドがあります。Railsを始めたばかりの初学者にとって、なぜコマンドが2つあるのか、違いは何なのかがわからず、混乱してしまうかもしれません。
結論から言うと、Rails 5以降を使っているならrails
コマンドに統一して問題ありません。Rails 4までは、コマンドの種類によって2つのコマンドを使い分ける必要があったのですが、それでは面倒だということで、Rails 5からrails
コマンドに統一されました。
特にRakeタスクの解説記事なんかでは未だにrake
コマンドを使っている例が非常に多いのですが、Rakeタスクの実行だからといってrake
コマンドを使う必要はありません。将来、もしかしたらrake
コマンドが廃止され、完全にrails
コマンドに統一される可能性を考えると、なるべくrake
コマンドは使わないようにしたほうがいいでしょう。
Rails 5からrails
コマンドに統一されたため、rake
コマンドを使って解説している記事は情報が古い可能性があります(Rails 4までの情報の可能性がある)。もし、rake
コマンドを使っている情報を見つけた場合は、あまり参考にしないほうが無難かもしれません。
なお、Rails 4までrails
とrake
をどう使い分けていたかについて詳しくは以下の記事を参照してください。
Rakeタスクの作成方法
Rakeタスクの作成
Rakeタスクを作成するには以下のコマンドを実行します。
$ rails generate task articles
articles
は作成するタスク名を指定します。ここで指定したタスク名は、作成されるタスクファイルの名称になり、また、デフォルトの名前空間にもなります。名前空間については後述しますが、Rakeタスクの実行にも関わってくるため、それを踏まえて命名したほうがいいでしょう。とはいえ、ファイル名にしろ名前空間にしろ、作成後に変更することはできるので、この時点ではあまり深く考えなくても大丈夫です。
上記のコマンドを実行すると、lib/tasks/
ディレクトリ配下にarticles.rb
というファイルが作成されます。
articles.rb
namespace :articles do
end
Rakeタスクの構成
一般的なRakeタスクの構成は以下の通りです。
articles.rb
namespace :articles do
desc 'Insert records into articles'
task :insert_data do
...
end
...
end
namespace
は名前空間を指定します。命名規則などは特にありませんが、ブロック内の各タスクを包括する名詞がいいでしょう。
desc
はタスクの説明を記述します。日本語でも構いません。省略することもできますが、説明のないタスクはrails -T
コマンドで一覧に表示されないのでご注意ください(詳細は「Rakeタスクの確認」セクションを参照してください)。
task
はタスクの名称を指定します。命名規則などは特にありませんが、当該タスクが実現する動詞がいいでしょう。
Rakeタスクは以下のようにコマンドを実行します。
$ rails articles:insert_data
このように、名前空間とタスクの名称がちょうど主語と述語のようになっており、コマンドを見ただけで何に対して何をするのかが一目瞭然です。Rails組み込みのタスクを例に挙げると、rails db:migrate
はdb
に対してmigrate
を行うタスクであることがすぐにわかります。
Rakeタスクの実装
作成したRakeタスクに処理を追加していきます。今回は例としてDBに任意のデータを作成するタスクを実装します。
articles.rb
namespace :articles do
# 以下を追記
desc 'Insert records into articles'
task :insert_data => :environment do
records = [
{
title: 'title-1',
content: 'content-1'
},
{
title: 'title-2',
content: 'content-2'
},
]
begin
current = nil
ApplicationRecord.transaction do
records.each do |record|
current = record
Article.create!(
title: record[:title],
content: record[:content],
)
end
end
rescue ActiveRecord::RecordInvalid => e
puts e
puts current
end
end
end
RakeタスクでActiveRecordを扱う場合、task
に:environment
オプションをつける必要があります。
新規レコードの作成や既存レコードの更新/削除を行う場合、まずbegin 〜 rescue 〜 end
ブロックを置き、その中にApplicationRecord.transaction 〜 end
ブロックを置き、さらにその中でレコード処理(作成/更新/削除)を行うようにします。
レコード処理中にエラーが発生した場合、まずApplicationRecord.transaction 〜 end
ブロックで例外が捕捉され、トランザクションのロールバックが行われます。ロールバックが完了すると再び例外が投げられ、今度はbegin 〜 rescue 〜 end
ブロックで例外が捕捉され、rescue
の処理が実行されます。
レコード処理(作成/更新/削除)は、必ずcreate!
update!
destroy!
を使用します。create
update
destroy
はエラーが発生したときに例外ではなくfalse
を返すため、例外を捕捉することができません。
Rakeタスク内で別のRakeタスクを実行
あるRakeタスクから別のRakeタスクを実行する必要がある場合、以下のように実装します。
namespace :tasks do
task :task_1, [:word] do |_, args|
puts "Hello, #{args.word}"
end
task :task_2 do
Rake::Task['tasks:task_1'].invoke('Rails')
end
end
これらのRakeタスクは以下のように実行することができます。
$ rails tasks:task_1[Ruby]
Hello, Ruby
$ rails tasks:task_2
Hello, Rails
Rakeタスクの実行方法
Rakeタスクの実行
Rakeタスクは以下のようにコマンドを実行します。
$ rails articles:insert_data
Rakeタスクに引数を渡す
例えば、以下のような引数を受け取るRakeタスクがあるとします。
articles.rb
namespace :articles do
# 以下を追記
desc 'Insert records into articles'
task :insert_data, [:title, :content] => :environment do [_, args]
begin
ApplicationRecord.transaction do
Articles.create!(
title: args.title,
content: args.content,
)
end
rescue ActiveRecord::RecordInvalid => e
puts e
puts args
end
end
end
このタスクを実行するには、以下のコマンドを実行します。
$ rails articles:insert_data[title,content]
注意点として、引数の間にスペースを含めることはできません。insert_data[title, content]
のように引数と引数の間に半角スペースが含まれているとエラーとなります。
Rakeタスクで引数を受け取る他の方法として、STDIN.gets
を使用して対話的にRakeタスクを実行することもできます。
まとめ
Rakeタスクの使い方としては、リリース後にスポットでデータを投入したり、wheneverというGemと組み合わせて定期実行したい処理を定義したりといったことができます。
スポットでデータを投入するようなタスクは、特定のタイミングでしか実行されない(=使用頻度が低い)ため、ローカル環境やステージング環境で正常に動作することを確認するだけでも問題ないと思いますが、定期的に実行するタスクは厳格にテストファイルを作成したほうがいいでしょう。
本記事を参考にして、Rakeタスクを活用していただければと思います。