はじめに
Railsでアプリケーションを開発する際、品質を担保するためにテストは欠かせません。その中でも、RSpecは多くの開発者に愛用されているテストフレームワークです。
今回は、RSpecを使ったRailsアプリケーションのテスト方法について、実践的な視点から解説していきます。
モック/スタブ
RSpecにおけるモックとスタブは、テスト中に依存するオブジェクトやメソッドの振る舞いを制御するための重要な概念です。モックはテスト中に特定のメソッド呼び出しを監視し、スタブは特定のメソッドの振る舞いを置き換える役割を果たします。
モック
モックについて
モックは、テスト中に特定のメソッドの呼び出しを監視し、そのメソッドが期待通りに呼び出されることを検証します。主に以下のような場面で使われます。
- メソッドの呼び出しの検証
- テスト対象のメソッドが他のオブジェクトの特定のメソッドを呼び出すことを確認する際に使用します。
- 動作の期待
- メソッドが正しい引数で呼び出されるか、あるいは何回呼び出されるかなどの条件を設定します。
モックの使用例
spec/models/user_spec.rb
require 'rails_helper'
RSpec.describe User, type: :model do
it "sends a welcome email" do
user = build_stubbed(:user) # データベースに保存せずにユーザーオブジェクトを作成
# メール送信をモック化する
mailer_double = instance_double(UserMailer)
allow(UserMailer).to receive(:welcome_email).and_return(mailer_double)
allow(mailer_double).to receive(:deliver_now)
expect(UserMailer).to receive(:welcome_email).with(user.email)
user.send_welcome_email
end
end
app/models/user.rb
class User < ApplicationRecord
def send_welcome_email
UserMailer.welcome_email(email).deliver_now
end
end
app/mailers/user_mailer.rb
class UserMailer < ApplicationMailer
def welcome_email(email)
# メール送信の実装
end
end
instance_double(UserMailer)
UserMailer
のインスタンスをモック化します。
allow(UserMailer).to receive(:welcome_email).and_return(mailer_double)
UserMailer.welcome_email
メソッドの呼び出しをモック化し、mailer_double
を返します。
allow(mailer_double).to receive(:deliver_now)
deliver_now
メソッドの振る舞いを設定します。
expect(UserMailer).to receive(:welcome_email).with(user.email)
UserMailer.welcome_email
が指定された引数で呼び出されることを期待します。
user.send_welcome_email
User
モデルの実際のメソッドを呼び出しますが、内部でUserMailer.welcome_email
がモック化された動作になります。
スタブ
スタブについて
スタブは、特定のメソッドの振る舞いを置き換えるために使用されます。テスト中に実際のメソッドの代わりにスタブを使って、特定の返り値を提供したり、メソッドの呼び出しを無視したりします。
- メソッドの返り値の設定
- メソッドが呼び出された際に返す値を設定します。
- 特定の条件での振る舞いの制御
- メソッドの引数や条件に応じて、異なる返り値を提供する場合に使用します。
スタブの使用例
spec/models/payment_processor_spec.rb
require 'rails_helper'
RSpec.describe PaymentProcessor, type: :model do
it "processes payment via external gateway" do
payment = build_stubbed(:payment) # データベースに保存せずに支払いオブジェクトを作成
# 外部サービスのクライアントをスタブ化する
gateway_double = instance_double(PaymentGatewayClient)
allow(PaymentGatewayClient).to receive(:new).and_return(gateway_double)
allow(gateway_double).to receive(:process_payment).and_return(true)
result = PaymentProcessor.process(payment)
expect(result).to be_truthy
end
end
app/models/payment_processor.rb
class PaymentProcessor
def self.process(payment)
gateway_client = PaymentGatewayClient.new
gateway_client.process_payment(payment.amount)
end
end
app/services/payment_gateway_client.rb
class PaymentGatewayClient
def process_payment(amount)
# 外部サービスへの実際の処理
true # 仮の成功を返す
end
end
instance_double(PaymentGatewayClient)
PaymentGatewayClient
のインスタンスをスタブ化します。
allow(PaymentGatewayClient).to receive(:new).and_return(gateway_double)
PaymentGatewayClient.new
の呼び出しをスタブ化し、gateway_double
を返します。
allow(gateway_double).to receive(:process_payment).and_return(true)
process_payment
メソッドの呼び出しをスタブ化し、仮の成功を返すように設定します。
result = PaymentProcessor.process(payment)
PaymentProcessor
クラスの実際のメソッドを呼び出しますが、内部でPaymentGatewayClient
がスタブ化された動作になります。
モックとスタブの違い
モック
メソッドの呼び出しを検証し、その呼び出しの正しさを確認します。テスト対象が他のオブジェクトに依存している場合や、特定のメソッドが期待通りに動作するかを確認する際に使用します。
メール送信や外部サービスの呼び出しなど、特定のメソッドの呼び出しの有無や順序を検証する場合に使用します。
スタブ
メソッドの振る舞いを置き換えて、テスト中の特定の条件に合わせた振る舞いを提供します。外部サービスや計算結果など、テスト中にコントロールしたい振る舞いを設定する際に使用します。
外部サービスのAPI呼び出しや、計算結果などの特定の返り値をテスト中に設定したい場合に使用します。
まとめ
RSpecを使いこなすことで、Railsアプリケーションの品質を大幅に向上させることができます。ただし、テストの書きすぎには注意が必要です。重要な機能や複雑なロジックに焦点を当て、バランスの取れたテスト戦略を立てることが大切です。
また、CIツールと組み合わせることで、継続的にテストを実行し、問題を早期に発見することができます。例えば、GitHubActionsを使えば、プッシュやプルリクエスト時に自動的にテストを実行できます。
Railsアプリケーション開発において、RSpecは強力な味方となります。ぜひ、日々の開発に取り入れて、より堅牢なアプリケーション作りを目指してください。